■目次■
使う前に調味料を味見する
レシピ通りに作れば必ずしも『美味しい料理』ができあがるとは言いきれません。
『レシビに書いてあるから入れる』のではなくて、どんな味のものを加えればその料理の味になるのかを『舌』で覚えることです。
出来上がった料理を味見するよりも、調味料そのものを味見することが重要です。
『この調味料はこういう味だ』とわかっていることが、良い味の料理を作るテクニックになります。
複数の調味料を扱う場合は、全てにバランスが必要であり、それは簡単ではありません。
ほんの微量の差で味に変化が出ます。
素材にとらわれず、味付けで勝負するなら調味料を活かす使い方をしなければならないし、素材の味を活かしたいなら、調味料は活かさず、より繊細な組み合わせとバランスと調和を必要とするでしょう。
自分が想像する味に近づける為に、まずは調味料をより深く知ることから始めましょう。
『あの店のあの味を再現したいなぁ』と思った時に『パッ』と頭のなかに調味料とその分量が閃いたら、あなたも味のプロフェッショナルです。
調味料を味覚で分ける
料理にこだわりのある人は調味料にもこだわりがあります。
●塩味を強調する調味料
『塩』『醤油』『味噌』『スープの素』
●甘味を強調する調味料
『砂糖』『蜂蜜』『ケチャップ』
●酸味を強調する調味料
『酢』『マヨネーズ』『ウスターソース』
●辛みを強調する調味料
『チリソース』『豆板醤』『おろしにんにく』『おろししょうが』
●苦味を強調する調味料
『ハーブ』『スパイス』
このようにカテゴリー分けして頭に入れておきましょう。
『塩味が欲しいな』という時に塩を入れれば塩味は補えます。
ですが、醤油を使えば『塩味』はもちろん大豆由来の『風味』も加えることができます。
このように調味料を味覚で覚えておくことは、味に『定義』や『ルール』を設けることなく『自由な発想』で料理を楽しむことができるようになります。
コク、旨み、深みについて
よく『コク』が足りないとか『旨み』が少ないとか、『深み』がないとか、言いますよね。
では、どうしたらそれらを補うことができるのでしょう。
コク
『コク』と呼ばれる物のほとんどは油脂分で補えます。
代表的なのは、『バター』や『生クリーム』などの乳脂肪分や肉類に含まれる脂肪分です。『ピーナッツバター』もよく使います。
『豚骨スープ』などは、『背脂』を使うことでコクを出しています。
カレーにチョコレートを入れたりしますが、チョコレートにはココアバター(カカオの脂肪分)や粉乳などの乳脂成分が含まれていますから、コクを出すには理に叶っているわけです。
また胡麻やナッツなどの植物由来の油脂を使って『コク』を出すこともあります。
『酸味が欲しいな』という時は『酢』を使いたくなりますが、敢えて油脂分の強い『マヨネーズ』を使うことで『酸味』だけでなく『コク』を加えることができます。
旨み
『旨み』とはいわゆる『旨み成分』のことです。
昆布や野菜に含まれる『グルタミン酸』
肉や魚に含まれる『イノシン酸』
キノコ類に含まれる『グアニル酸』
これらを組み合わせることで生まれるのが『旨み』というわけです。
基本は
【グルタミン酸にイノシン酸を加える。】
または
【グルタミン酸にグアニル酸を加える】
といった、グルタミン酸を主軸とした組み合わせがよく使われます。
単体では得られなかった旨みも、旨み成分同士が合わさることで『強い旨み』に変化します。
これを旨みの『相乗効果』と言います。
当然これらは調味料にも含まれています。
調味料にこれらの『旨み成分』が入ったものを上手に使いこなせば、簡単に旨みを作り出すことができるわけです。
代表的なうまみ調味料に『味の素』があります。グルタミン酸を含有する調味料です。
何故か敬遠する人が多くいますが、誤解があるみたいです。
『体に悪い成分が含まれている』と言った内容ですが、大間違い。
天然のサトウキビから抽出した糖蜜を発酵し、粉状にしているだけなので、むしろ使うべきです。
3~4振りするだけで簡単に旨み成分を加えることができます。
肉料理に魚料理に是非使ってみてください。
『甘味』と『酸味』が必要な場合は、『砂糖』と『酢』ではなく『ケチャップ』を使うってみましょう。
どちらの味も補えますし、トマトに含まれる旨み成分『グルタミン酸』も一緒に加えることができます。
『めんつゆ』や『だし醤油』は昆布エキスがグルタミン酸を、鰹ぶしエキスがイノシン酸を含んでいるので、それだけで『旨み』を成立させています。
『グアニル酸調味料』はなかなかお目にかかることはありませんが、主に粉末椎茸などとして売られています。
また、うまみ調味料と呼ばれる物に含まれていることもあります。
このように食材の旨みだけでなく、調味料で『旨み』をコントロールすることもできるのです。
深み
『深み』とは味の要素がどれだけたくさん入っているかです。
味の要素とは『塩味』『甘味』『苦味』『酸味』『辛み』のことです。
これらの味を全て感じさせる必要はなく、それぞれの味を引き立たせるためにバランスよく合わせることが重要です。
わかりやすいのは塩と砂糖の『対比効果』でしょう。
異なる2種類の味を調合し、一方の味を強く感じさせる効果です。
砂糖に少量の塩を入れることで甘味を引き立たせることができます。
逆もあります。
塩味を引き立たせるために少量の砂糖を入れたりもします。
こうすることで、ただの砂糖味、ただの塩味ではなく、『深み』のある砂糖味、『深み』のある塩味に変化させるわけです。
味噌の場合、主原料が『米』『大豆』『麦』と3種類あります。
『米味噌』『豆味噌』『麦味噌』です。
同じ味噌でも違う風味を持っているので、合わせて使えば、深みも増します。
つまり『合わせ味噌』を使えば簡単に深みを追加することができるわけです。
これを応用して『苦味』『酸味』『辛み』といった調味料やスパイスを、メインの『味』に対して微量のバランスで複雑にしていくことが『深み』の正体なのです。
その数が多いほど、味に『深み』が増していきます。
『何だか味が物足りない』
こんな時にやりがちなのが、『塩味』を足してしまうことです。
それでは塩辛くなってしまうだけで味の物足りなさを補うことはできません。
実は、足りていないのは『酸味』である場合がほとんどです。
塩味や甘味を主張する料理に『酸味』を加えるのはなかなか抵抗があります。
酸っぱい味にしたいわけではありません。
あくまでも味に深みを出したいだけです。
レシビに書いてなくても、『酢類』をほんの少しだけ入れてみましょう。
『果汁』でも構いません。
まずは数適から入れてみます。
あくまでも味が酸っぱくならないように、入っていることがわからないくらいが丁度良いでしょう。
一度試してみてください。
料理の素材を変えるのではなく調味料を変えてみる
試しに普段は入れない調味料を、敢えてほんの少しだけ料理に入れてみてください。
例えば、
塩味を出したいときに、塩の代わりに『コンソメの素』や『中華スープの素』を加えてみる。
また、食塩を『天然塩』に変えてみれば、自然の塩の甘味を追加できます。
甘味を出したいときには、砂糖ではなく『蜂蜜』を合わせてみる。
酸味なら、『穀物酢』を『果実酢』に変えてみるなど。
同じ役割を持つ調味料を変えるだけで、いつもと違った風味を感じることができるでしょう。
『焼き肉のタレ』は醤油をベースに『砂糖』『食塩』『リンゴ』『蜂蜜』『黒蜜』『にんにく』『ゴマ』『もろみ』など、これ1つで『深み』を成立させています。
醤油の役割を『焼き肉のタレ』で代用することはよくありますよね。
ある意味で万能調味料です。
ワンランク上を目指すなら、
『醤油』に少量の『ナンプラー』を合わせる。
『甘味』のあるものに敢えて『苦味』(スパイス)を加えてみる。
『塩』を使う時は必ず『砂糖』を少量入れるようにする。
『サラダ油』の代わりに『ラード』を使ってみたり。
洋食に『オイスターソース』を使ってみる。
などなど、、、
様々な料理と調味料の組み合わせにチャレンジしてみることが、料理を楽しむことに繋がります。
その為にはやはり調味料の味をよく知っていることが重要になるでしょう。
いつもとは一味違った風味に変化させることができるはずです。
高価な調味料を使えば料理の味は良くなるのか?
同じ塩でも食塩(精製塩)から、天然塩(自然塩)のようにミネラルや旨みのある塩まで様々あります。
価格は食塩に比べれば天然塩は倍以上、物によっては、食塩1kgの価格と天然塩100gが同等だったりします。
では価格の高い調味料を使えば味はおいしくなるのか?
確かに高価な調味料は、味も違えば風味も栄養価も断然高いと言えます。
それだけで十分に味わえるものだとわかります。
ですが、
料理の味を良くするために高価な調味料が必要かどうかは、首をかしげてしまいます。
調味料とは『調味するための材料』なので、素材と複数の調味料との調和が最も重要です。
高価な調味料は、全体の味のバランスや他の調味料との融合の邪魔になってしまうことがあります。
そのものが優秀なので突出してしまいがち。
ドラマなら脇役が主役を食ってしまうことになります。
調味料に素材が負けてしまっては本末転倒ですよね。
素材を活かすことが調味料の役目であり、それが『料理をする』ということです。
ですから、たとえ安価な調味料を使ったとしても、そのバランスや調和が整ってさえいれば、味の良い料理に仕上げることはいくらでも可能なのです。
高価な調味料は素材に直接付けて食べるほうが持ち味を活かしてくれます。
最初から高価なものを使うより、まずは一般的な調味料を使いこなして、物足りなくなってから高価な物にチャレンジしていきましょう。
読んでくださってありがとうございました。